環境問題と塗料の関係

環境問題は、20世紀後半からの人類の最大の課題となっています。

 

環境と開発の共存という概念、つまり「持続可能な開発」という概念のもと、
世界は進んでいますが、
その最中にも温暖化など、多くの環境問題、そして解決が困難な課題が多く見られています。

 

塗料や塗装と言う観点から環境問題を考えてみると、
やはり、VOCの削減が最重要課題であるといえるでしょう。

 

欧米各国には既に規制があり、
日本でも2006年から、「改正大気汚染防止法」が施行され、
大規模固定発生源(工場)の排出ガス濃度規制と非規制業者への
自主的な取り組みが義務化されるようになりました。

 

特に塗料分野は、VOC排出量が大きく厳しい対応が求められています。

 

また、オゾン層破壊という問題では、
プラスチックの塗装前の処理に用いられてた
トリクロロエタンが使用中止されています。

 

さらに、地球温暖化の主な物質であるといわれる
炭酸ガス削減でも、
日本は京都議定書で削減方針を打ち出し、努力がされています。

 

塗装工場では、塗装工程のエネルギー消費を減らすことを、
炭酸ガス削減の主な方法としています。

 

環境汚染といえば、土壌や水質汚染の問題も重要で、
日本では「廃棄物の処理及び正装に関する法律(廃掃法)」、
「土壌汚染対策法」、「水質汚濁防止法」などの法律があります。

 

また、欧州でも、様々な法律が施行されています。

 

日本の産業商品を輸出する際には、
国内法だけでなく、世界での対応に関しても注意する事が必要です。

VOCの削減には

VOC(揮発性有機化合物)を削減するためには、
以下のようなことを考え、実行することが必要です。

 

また、どの方法を組み合わせるかは、
製品の品質、及び材料、工程のコスト、
塗料、塗装法、設備等を考え、
総合的に判断することが重要です。

 

(1) 低VOC塗料への切り替え

 

   固形分濃度が高いハイソリッド塗料、或いは無溶剤塗料、水性塗料、
  粉体塗料の使用の推進。

 

   使用用途に応じた適用可能なVOC排出抑制塗料とその課題は、
  日本塗料工業会で示されています。

 

   しかし、品質上の課題をよく理解することも必要です。

 

 ・適用可能なVOC排出抑制塗料

 

 (水性塗料) 

 

  VOC含有量削減塗料: 建築内外装、電着塗料、家庭用、窯業建材などに用いる。
           (課題として、乾燥性、作業性低下、低温造膜性、塗膜強度がある)

 

  溶剤系からの変換塗料: 自動車中・上塗り、自補修、車両、木工、構造物、路面表示などに用いる。
             (課題として、乾燥性、作業性低下、塗膜強度、光沢、鮮映性、コストアップがある)

 

 (無溶剤塗料)

 

   床、船舶、構造物などに用いる。
  (課題として、作業性、塗料ロス、コストアップ、多液化がある)

 

 (ハイソリッド型塗料)

 

   船舶、構造物、機械、建材、金属等に用いる。
  (課題として、作業性低下、コストアップ、多液化がある)

 

 (液体塗料)

 

   電気機械、金属、機械などに用いる。
  (課題として、設備自由度限定、素材の選択性、コストアップがある)

 

(2) 塗装方法の見直し

 

   スプレー塗装の場合、塗着効率(TE)がとても重要です。

 

   塗着効率(TE)とは、使った塗料の内の何%が被塗物に塗着したかというもので、
  通常のエアスプレーでは塗着効率(TE)=30%ですが、
  静電塗装やエアレス塗装では、塗着効率(TE)=50〜70%になります。

 

   均一な膜厚となる様に塗装する事や、色替えの際の
  洗浄用シンナーの量を減らすことも大切です。

 

(3) VOCガスの後処理

 

   VOCを排出しない方法を行うことが大切です。

 

   たとえば、インシエネレーターという焼却設備や、
  活性炭による吸着等の方法があります。

ハイソリッド塗料と無溶剤型塗料

ハイソリッド塗料と無溶剤型塗料は、より固形分の割合を高め、
VOCを削減する事を目指したもので、
共に各種工業用塗料、船舶、重防食塗料などの分野で
開発がされています。

 

また、塗装作業性や塗膜外観性などの改良もされています。

 

・ハイソリッド塗料

 

今まで使っていた塗料の固形分が40%だったものを
80%のものに変えると、
揮発する溶剤量は60%から20%に減少します。

 

一般的に、固形分が70%以上の塗料を、
「ハイソリッド(高固形分)塗料」といいます。

 

しかし、ハイソリッドと呼ばれる塗料の固形分は、
業界で一律ではありません。

 

ハイソリッド塗料を得るためには、
樹脂の分子量を下げ、系の年度を下げ、
固形分が高くても同じような粘度で塗装できるようにするのが、
最も基本的な方法です。

 

ですが、樹脂分子量を低下すると、
硬化塗膜の硬さなどの諸物性が低下し、
また、耐候性も著しく低下してしまいます。

 

この低下を防ぐためには、
塗膜が硬化する際の反応点を多くし、
また、ハイソリッド塗料では塗装する際にたれ、ぬれ不良などの
塗装欠陥を生じやすく、
表面張力、構造粘性の調整が必要になります。

 

自動車塗装の最上層のクリヤ塗料に、
日本ではハイソリッド塗料が有力視され、
kライ外では、ダイムラ・クライスラー社ニューワーク工場の
65%固形分塗料の採用がありますが、
更なる固形分向上を目指し、よりVOCを削減する努力がされていmAsu .

 

・無溶剤型塗料

 

無溶剤型塗料とは、溶剤量をゼロにした塗料です。

 

たとえば、スチレンモノマーという反応性希釈剤で溶解した
不飽和ポリエステル樹脂塗料や、
アクリルモノマーで希釈した紫外線硬化塗料などがあります。

水性塗料

環境対応型塗料のあり方のひとつとして、
「塗料の溶剤を水に置き換える」という方法があります。

 

まず、「水」についてみてみると、
水は、とても特徴的な物質であることが分かります。

 

たとえば、極めて特徴のある物質である「水」は、
分子量が18しかありません。

 

ですが、液体であり、沸点が100度もあります。

 

さらに、蒸発度は低いのです。

 

このような水の特徴は、水素結合力という水分子同士を
互いに引き合っている力によるもので、
この特徴が、水性塗料の特性も支配します。

 

たとえば、水を溶剤の替わりに使おうとすると、
大きな問題にぶつかります。

 

(1) 樹脂を溶解できない

 

まず、樹脂を溶かすことができないという問題があります。

 

そこで、樹脂の一部に水に親和性のある構造を加え、
樹脂を溶解する、或いは水分に分散しなければなりません。

 

その形態によって水性樹脂は、水溶性型、
コロイダルディスパージョン型、エマルション型に分かれます。

 

あまりにも親和性を強めてしまうと、
溶解性はUPしますが、塗膜の耐水性がダウンします。

 

ですから、一般的には、
コロイダルディスパージョン型、もしくはエマルション型のものを
選択します。

 

(2) 水の蒸発が遅い

 

水の蒸発の遅さも、問題になります。

 

自動車用水性メタリックベースコートは、
スプレー塗装時に水が蒸発する事による
粘度上昇が期待できません。
そこで、スプレー時には低粘度、塗着時には高粘度になるような
塗料の設計がされ、タレやアルミニウム顔料のムラを塞ぎます。

 

また、次の工程であるクリヤ塗装の前に、
赤外線や熱風を用い、水を蒸発させます。

 

水の蒸発は、当然空気中の湿度の影響設けます。

 

(3) 表面張力が大きい

 

水性塗料は、表面張力が大きいというのが問題になります。

 

そこで、一般的に、多くの水性塗料では、塗装作業性や成膜性向上のため、
塗料中に少量の有機溶剤を併用します。

 

水性塗料は、建築用エマルション塗料だけでなく、
工業用焼付け塗料、汎用塗料の開発も進んでいます。

 

近年の例を見てみると、東京タワーの塗り替えでも、
水性塗料が使われ、VOC削減が図られています。

 

VOC削減の取り組みは、塗装業界だけの問題・取り組みではなく、
東京都の取り組みでもあります。

粉体塗料

VOCの観点から見ると、粉体塗料も理想的な塗料です。

 

粉体塗料は、固体樹脂に顔料や添加剤を分散・混合した塗料で、
硬化剤に用いるブロック剤や低分子成分が焼き付け時に
揮発するということを除けば、VOCは基本的にゼロです。

 

・熱硬化性粉体塗料

 

熱硬化性粉体塗料には、エポキシ樹脂系、エポキシ/ポリエステル樹脂系、
ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系粉体塗料があります。

 

エポキシ樹脂系、エポキシ/ポリエステル樹脂系は、一般金属用塗装に用いられ、
ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系粉体塗料は、
屋外で使用する金属製品に用いられるのが一般的です。

 

樹脂、硬化剤の選択をするときには、
塗膜の性能だけでなく、粒子凝集への配慮が必要です。

 

近年、塗装後、110度程度で溶解した後、
紫外線硬化させる粉体塗料が開発され、
この塗料は、木材にも用いられています。

 

粉体塗料の実績はとても長いのですが、
販売量は少ないです。

 

なぜなら、粉体塗料には、専用の塗装ブース、塗装ガンなどの設備我必要で、
色替えにも手間がかかること、
塗装後、塗膜外観性に問題が出ることなどの理由があります。

 

また、供給側も製造に手間がかかりますし、
色あわせも容易ではありません。

 

ですが、粉体塗料は、一回塗りで厚膜塗装も可能ですし、
強靭な膜を形成する事もできます。

 

このため、粉体塗料は家電や自動車部品、金属製品など
多くの分野で活用されています。

 

家電製品では、平板に粉体塗料を塗装し、
その後、成型加工するプレコート粉体塗装がされます。

 

さらに、粉体塗料には、このほかにも、
ポリエチレン、ふっ素樹脂、ポリアミド等を使用した
熱可塑性粉体塗料もあります。

 

VOC削減が叫ばれている近年、
粉体塗料の需要は、きっと伸びていくでしょう。

 

・粉体塗料のメリットとデメリット

 

(粉体塗料のメリット)

 

 ・VOCがほぼ0%である。
 ・非危険物である。
 ・一回塗りが可能である。
 ・厚膜塗装が可能である。
 ・回収粉の利用が可能である。
 ・強靭な塗膜ができる。

 

(粉体塗料のデメリット)

 

 ・塗膜外観性(ゆず肌)の問題。
 ・専用塗装設備が必要である。
 ・色替えが面倒である。
 ・小量多品種生産に不向きである。
 ・調色が難しいという問題。