船を守る塗料

日露戦争の日本海海戦で、
東郷平八郎が率いる日本海軍がロシアのバルチック艦隊を破りました。

 

これは、日本の作戦がウマくいったという部分もあるのでしょうけれど、
長い航海でロシアの軍艦に汚損生物が大量に付着し、
船速が落ちたことが、バルチック艦隊の敗因の一つであったといわれています。

 

このことからも、長期間海水にさらされ、
海に浸漬している物体にさらされる船を守る塗料はとても重要なことがわかります。

 

塗料によって、船底をキレイな状態に保つことができれば、
余分な燃料を消費せず、船を快適な状態で運行することができます。

 

海水に浸漬している物体には、
海洋バクテリアや珪藻などがあり、これらが付着すると
スライム層と呼ばれる薄い膜状付着層ができて、
その部分に大型生物が付着してしまいます。

 

船の場合は、主にアオノリなどの海藻類や、フジツボ類が問題になり、
水産養殖用の魚網では、ムラサキイガイ、フジツボ、ヒドロ虫などが問題になります。

 

このような大型付着生物であるヒトが汚損生物と呼んでいる生物が付着すると、
船は船速が低下し、エネルギー消費量が増えてしまいます。

 

また、養殖用魚網では、付着生物の重みや海流の抵抗によって、
網が破れてしまうこともあります。

 

汚損生物によって、大切な産業が損なわれてしまうのは、
なんとか避けなければいけません。

 

そこで、船底塗料として、汚損生物の付着を防ぐため、
船の進行に伴って表面から徐々に樹脂が加水分解する
自己研磨型塗料として有機錫ポリマー塗料が開発されました。

 

この有機錫ポリマー塗料は、高い防汚性を持っていました。

 

しかし、錫の巻貝への生殖器能異常、いるかや鯨への蓄積性が認められたことから、
日本では1997年からの使用が全廃しています。

 

その後、この有機錫ポリマー塗料に代わる塗料として、
銅アクリルポリマー、珪素ポリマー、亜鉛ポリマーなどが
開発され、防汚薬剤を混合したものが、実用化されました。

 

これらの新しく開発された塗料は、
船の進行に伴って表面から自己研磨することで
汚損物質の付着を防ぎ、2年程度の船の運航を可能にします。

 

近年は、常温硬化型のシリコーン樹脂、液状オイルを組合せ、
生物そのものが付着しにくい塗料が、
船底塗料用として開発されています。